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2009年8月10日 (月)

Hさんの同僚のOさんが大学生だった頃の話。
Oさんが住んでいたアパートには、しばしば足が出たという。
たぶん若い女、爪はきれいに手入れされ、肌も白く、すべすべしていた。
その女の足が、たとえば畳に寝ていて寝返りを打ったりすると、床から十センチくらいの空中に、爪先を下に向けて浮かんでいるのが目に入るのだ。
あッと思って見直そうとするとつぎの瞬間には消えてしまう。
そんなことが何回かつづいた。
こわいという感じはなかった。むしろ、あの足の上はどうなっているのか、ひょっとして美人なんじゃないかと、Oさんはだんだん気になってきた。
ある日、いつものように寝転がってテレビを見ていた。チャンネルを変えようとリモコンを探したら、目に飛び込んできた。
女の足である。
爪先を下に向けて、床から十センチくらいの空中に浮かんでいる。
とっさに女の顔をたしかめてやろうと視線を上に向けた。
いつもならすぐ消えてしまうはずのそれは、その日にかぎってどういうわけか消えなかった。
視線を天井のほうに向けるあいだに、しかしOさんは気づいてしまった、人間の足が、二本そろって床から十センチのところにぶらんとぶら下がっているのが、いったいどういう状況を意味しているのかを。だからといって、まるで強引に誘導されてでもいるように、見上げるのを止められなかった。
女の顔が目に飛び込んでくる直前に、Oさんはかたく目をつむった。
おかげで女の顔を見ることはできなかったが、Oさんはまったく後悔していないという。

KWAIDANシリーズ.....


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